宇宙初期に創られたかもしれない超重粒子の探索


1994年6~7月の実験:気球高度での超重物質の探索

中村研究室では,加速器では調べることの困難な超高エネルギー世界の物理現象の兆候をつかもうとする研究を行っています。そのうちのひとつのテーマとして,検出器を気球に搭載することによって,飛程が短く,地表に到達することの不可能な比較的軽量かつ低速の超重物質(ストレンジマター,テクニカラーマター等)の検出を目的とする探索実験(『気球高度での超重物質の探索』)を,1994年に行ないました。

[1994年6月1日]宇宙科学研究所の三陸大気球観測所(岩手県三陸町)から放球された,気球の実験の様子です。

これが、ボクたちの検出器を搭載したゴンドラなんです。

「早く、お空を飛びたいよぉ。」

「風さ。」


ボクたちの検出器なんだよ。

発砲スチロールに埋め込んであるのが、検出器です。

1個がA4ほどのサイズで、計8個搭載しました。

これで、世紀の大発見があるかもしれないんだね。


気球にガスが入ってきたぞ。

緊張してきたー。

もちろん、中身はヘリウムです。


朝陽、霧……

ボクたちの夢の朝にピッタリの景色だ。いつか見たような気さえしたよ。

今でも、想い出すんだ。

すごく、胸が高鳴っていたんだ。


これが三陸大気球観測所です。

気球を上げるところは、滑走路みたいでかっこよし。

それにしても、いい天気だ。


山は緑、大空は青。

はばたけ! ボクたちの気球。


うわぁ……。気球って長いでしょ?

100m近いんですよ。

上空30kmでは、気圧は、地上の1/100ぐらいなんです。

だから、今細くなってるところも、

気圧が低いから上空では膨らむんです。


いよいよ上がる?

カウントダウン開始。


気球,上がっちゃったよ!

上がっちゃったよ!先生!


あれっ? どうしたのかな?

気球がにじんで見えるよ。


♪気球,上がってく~

ボクたちの夢を載せて~

(G→Bm→D→A)

(♯)Ah~気球上がってく~♪

あああ~♪ もう、こんなに上に行っちゃったよ。 これから、ひとりぼっちの旅なんだね、気球くん。 気球の飛行が安定したのを確認してから、 ボクらも気球を追って、一路、日本海岸へ。

「風まかせのあなたを追って、 行き先の分からないタクシーに飛び乗ったの……。」 ほんとに太平洋側から、日本海を臨む 秋田まで、タクシーだったんですよ。

気球は東北地方を横断し、秋田上空へ。高度約30kmを飛行する気球には西陽があたり、 暗くなった地上からは輝いて見えてしまうのだ。高度30kmって言っても、意外と見えるもんなんだね。 そんなことで、 "UFO目撃者続出!" 警察、新聞社等に電話殺到。

本目撃写真は秋田県能代市にて、 我々が一晩、潜伏した宿から撮影されたものである。 その後、男鹿半島沖でゴンドラは切り離され、日本海へ着水。 放球から約14時間後の出来事であった。

翌日…

翌朝、海上に浮かぶゴンドラを求めて

男鹿半島沖へ出帆!

「船に乗って~♪」

でも、船に乗ったのは、中村氏だけ……。


キャプテン、帰ってきました。

出迎えのブラスバンドの演奏が、
静寂の中、響きわたっていたのです。


港へ戻ってきた、ゴンドラくん。

待ちくたびれたよ……。

でも、海風に吹かれながら甲板(デッキ)に立ち、港を見つめる…

そんな凱旋帰港。

カッコよかった……。


夏休み('94年7月下旬)。

岐阜県は神岡にて、プラスティック飛跡検出器CR-39の現像(エッチング)作業。

なんてったって暑かった。

熱かった。

あぁ疲った。

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